中川運河助成 ARToC10

中川運河再生文化芸術活動助成事業とは
中川運河再生文化芸術活動助成事業(愛称「中川運河助成ARToC10」)は、中川運河「にぎわいゾーン」の魅力向上を目指し、中川運河を舞台とする市民交流・創造活動につながる、アートへの助成事業です。
平成25年度から始まったこの助成事業は、「中川運河再生計画」(2012年10月名古屋市・名古屋港管理組合 策定)の主旨に賛同されたリンナイ株式会社からの寄附を活用させていただき、名古屋都市センターはその事務局を担ってきました。
10年間で45のアート活動が実施されましたが、これらは単なるアート活動ではなく、この地域の魅力・価値を見出し、人々を繋げ、ものづくり産業を支えてきたこの地域の可能性を広げるなど、「中川運河×アート」によって、まちづくりに繋がる活動となりました。

助成の愛称、「中川運河助成ARToC10」(ナカガワウンガジョセイアートックテン)は、Art(アート)の“A”、Re-(再生)の“R”、Try(挑戦)の“T”、ofの“O”、Creation(創造)の“C”、そして10年(H25〜R4の助成期間)の“10”から生まれました。ロゴは、愛称の文字と中川運河のかたちをもとに創られています。
実施された45のアート活動
この事業を通して、10年間で45のアート活動が実施されました。運河沿いにある倉庫を利用した演舞や神社での演奏、運河という空間でのインスタレーション、運河沿いの建物や空地を活用した展示、運河を舞台とした映画をはじめとした映像制作等、「にぎわいゾーン」において様々なアート活動が展開されました。
それぞれのアーティストが、中川運河の持つ資源に焦点を当て、地域との繋がりを作りながら、自分たちの持ち味を生かし表現してきました。
特に、神社をはじめとする拠点での活動や、地域住民とのワークショップは、地域との繋がりを形成すると共に、アートを通じて地域の価値に気づく機会となり、シビックプライドを育むきっかけ作りにもなりました。
またこの地域には、ものづくり産業を支える高度な技術を持った企業がたくさんあります。その企業の力を使って舞台芸術を制作していく試みもされていました。
作品を観る一般の方も、様々な形でアートやアーティストに触れ、楽しんでいただきました。当日のイベントに参加された方のみではなく、事前のワークショップに参加された方、関連イベントに参加していただいた方と、幅広く関わっていました。特に、小学生を始めとする子供たちのワークショップへの参加は、これからの世代を担う彼らにとって、素晴らしい経験だったと思います。
事業を振り返って
事業の効果
・中川運河×アートにより、中川運河再生計画を推進した
・アートを通じてこの地域の魅力を再発見することができた
・ワークショップ等に参加することで、アートを身近に感じることができた
・アート活動を通じて、この地域の繋がりが出てきた
・シビックプライドが醸成され、地域ブランド創出の可能性が出てきた
見えてきた課題
・運河を中心とした活動ではあるが、拠点があると更によい
・単発で終わってしまい、継続した活動となっていない
・アーティストだけで、この地区を盛り上げるのには限界がある
・アーティストと地域を結ぶ環境を作るには、コーディネーターが必要
・発信力を高めることが必要
今後に向けて
地域の活性化や再生につながるこうした取り組みが、着実に根付いてきています。
2021年5月に開催された「世界運河会議NAGOYA2020」においても、この取り組みが高く評価され、これからのまちづくり、特に、この地域のモノづくりとアートによるまちの活性化が、大いに期待されていました。
もちろん、課題も見えてきました。「活動拠点がない」「アーティストだけで、この地域を盛り上げるには限界がある。」「アーティストと地域を結ぶコーディネーターが欲しい」などがあげられます。今後継続していくためには、乗り越えなくてはならないことです。
かつては、名古屋の産業を支えてきた中川運河。しかし、時代と共に役目も終わりを迎え、多くの方が背を向けてきた中川運河に、アートを通して新しい価値を発見する機会を作ってきました。アーティストは、中川運河の持つ魅力に向き合い、表現し、市民はそれを見て感じ、気づき、新たな価値を再発見してきました。
この10年の活動によって、よい機運が生まれてきました。形は変わったとしても、今後も継続し、中川運河、特に「にぎわいゾーン」が「港と文化を感じる都心のオアシス」になっていくことを願います。